ことほぎのきみへ
子猫が苦しくないぎりぎりの力加減で
めいいっぱい抱き締める

そんな私の顔にじゃれるようにぷにぷにの肉球をあててくる子猫


「っ!!」


……なにそれ、なにそれっ

あざといっ
かわいいっ

かわいすぎるっ!!



「…」


「……あ、ご、ごめんなさい……っ
ひとりではしゃいじゃって……」


もともと動物全般が好きで
特に犬猫には目がない私

優と花菜がふたり揃ってアレルギーを持っているから家で飼えない分

対面した瞬間に我を忘れて
猫に夢中になってしまっていた


じっと私を見ていたひさとさんは首を横に振ると
口許を緩めて


「良かった」


嬉しそうにそう言った


「え?」

「ようやく普通に笑った」


どこか安心したようなその声に虚をつかれる


「ずっと、見てなかったから
いろはのその顔」


……。
…………もしかして…


「……だから、ここに?」


隣に座って
傍に寄ってきた猫を抱き上げるひさとさん
その肉球を触りながらまた私を見て
笑って肯定した


「いろははそうやって笑ってる方がいいよ」


……。

………ここ最近の私のこと…

気にしてくれてるのは分かってた


だけど


……こんな風に行動に移してくれるなんて思わなかった

私のために何かをしてくれるなんて思わなかった
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