ことほぎのきみへ
「一樹、ゆまちゃんはいつ来るって?」

「昼過ぎに来る」

「そっか」

「ん!かず君、やばい!
なんか、お店混んでるっぽい!
ヘルプメールきた!」


スマホをいじっていた亜季が目を見開いて
やばいやばいと一樹の半被を引っ張る


「まじかよ…
休憩入ったばっかだぞ」

「ロシアンたこ焼き爆売れだって!やった~!」

「…………まじかよ」


ロシアンたこ焼きは亜季がノリで提案したもの
ネタになるからと採用されたそれが

どうやらかなり売れてるらしい



「わり、いろは
俺と亜季戻るわ」

「ごめんねぇ、いろちゃん」

「ううん、頑張って」



駆け足でお店に戻っていくふたりを見送る

まだ少し時間は余ってたけど
ひとりでまわるのも寂しいから、私もお店に戻ることにした




……ひさとさん、いつ来るかな

用事が終わり次第行くからって言われたけど…


いつ来るかなって
私は朝からずっとそわそわしてる


……

…………一緒に……


ほんの少しの時間でいいから

ひさとさんと一緒に文化祭を見てまわりたい


ひさとさんとは
ふたりでごはんを食べたり
たまに一緒に出掛けたりもするけど


こういう学校行事は
そういうのとはまた違った特別感を感じるから



「っ!」



そんな事を考えていると


曲がり角の先で
どんっと誰かにぶつかって尻餅をつく



「…ご、ごめんなさい……っ」


ぼーっとしてた……っ

人が多いから気を付けてたのに



慌てて頭を下げた私に差し伸べられた手



「わりっ、大丈夫か?柳」



……この声……



「……悟せん……ぱ………………い?」
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