ことほぎのきみへ
「おかえり、いろは」


準備室に戻ると
ちょうど衣装に着替え終えたゆうりがいた


「ただいま、ゆうり
さっき悟先輩に会ったよ」

「っ、……そ、そう」


悟先輩の名前を出せば
ゆうりがあからさまに動揺する

びくりと肩を上げると
浮かない表情を浮かべて、小さく俯く


……?


怯えるような
怖がるような反応に違和感を覚える


嬉しがったり恥ずかしがったり

いつものゆうりならそういう反応をするから



「…」



……気には、なってた

ゆうりがなんだか昨日から様子が変で


話しかけても上の空で、ずっとぼんやりしてて

時々、泣きそうな顔をしてたから

話を聞こうとしたけど
中々タイミングが合わなくて

今日も

休憩時間、誘う前に
いつの間にかいなくなってて



……

…………もしかしてその原因って……



「ゆうり、悟先輩と何かあった?」

「…」

「悟先輩も、少し変だったから」

「……っ、さ、悟先輩……な、何か言ってた?
困ってた……?い、嫌そうな顔、し、してなかった……っ?」


そう言うと

ゆうりは伏せてた顔をばっと上げて
焦ったように私に詰め寄ってきた


……その目には、涙が滲んでて


私はそんなゆうりにびっくりして



「……まっ、ゆ、ゆうり…ほんとにどうしたの……?」



取り乱すゆうりに私も動揺してしまう
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