ことほぎのきみへ
「……」

「……悟先輩と、何かあったんだよね?」


原因が悟先輩なのは確定
ゆうりの反応ですぐ分かる


……
……
……



「…………一昨日」


瞳を潤ませたまま


「…………一緒に、帰った時に……
言っちゃったの……」


ゆうりは後悔するように呟く


「……悟先輩に…………好きだって…………」


……。


「い、言うつもりなかった……まだ……
なのに……するって……その言葉が口から出て…………」


潤んだ瞳から

ぽろぽろぽろぽろ

溢れた涙が床に落ちていく


「……さ、悟先輩、び、びっくりしてて……
こ、怖くなって……そのまま、逃げちゃって……」


「……メールも、電話も、来てたけど
……怖くて、全部、……無視しちゃって……」


「…」


ひどく怯えてるゆうりを私は抱き締めて
ぽんぽんと背中を撫でた

ゆうりは堰を切ったように泣き出して


「……どうしよう……いろは……
…………こわい……」



……その姿が


『……ゆまちゃん、私、どうしたらいい?
…………怖い』


……その姿が、いつかの私と重なって



「……うん」



ぎゅうっとゆうりを抱き締めた


……ゆうりにとって悟先輩は
それくらい大切でかけがえのない相手ってこと



「……」



すがるように
私にしがみついて泣きじゃくるゆうり


ゆうりが落ち着くまで私はずっと
そのままゆうりを抱き締めていた
< 189 / 252 >

この作品をシェア

pagetop