ことほぎのきみへ
「……怖いのも、逃げたい気持ちも
……すごく……分かる」


だけど

意識的だろうと無意識だろうと
放った言葉は消えない

なかったことにはできない


恥ずかしくても怖くても逃げたくても

諦められないなら
捨てられないなら

向き合うしかない


「……今すぐ
悟先輩にちゃんと伝えろなんて言わない」


ゆうりは隠してた本音をこぼしてしまって
すごく動揺してる

不安と恐怖でいっぱいで、余裕なんてない

だから
少し気持ちを落ち着かせる時間が必要だろう

気持ちを整理して、考える時間が


「ただ、一言
メールとか手紙とかでいいから
少し時間が欲しいってことは伝えよう?」


「悟先輩は伝えたら
ちゃんと待っててくれる人だから」


「……待っててくれる人だから
焦らなくても大丈夫だよ」


ちゃんとしなきゃって慌てなくても

焦って、なのにうまくいかなくて

それで泣きそうにならなくても



「……うん…………うん……っ」


また瞳を潤ませながら、ゆうりは何度も頷く
その頭を撫でながら笑いかけた



……
……



「あ、いろはちゃん
もういいの?」

「うん。ゆうりはもう少ししたらくるから
真白ちゃん、もうちょっとお願いしていい?」

「全然いいよ~」



私とゆうりの代わりに
お店番をしてくれてた真白ちゃん

にこっと笑ってピースサインをしてくれる
真白ちゃんに「ありがとう」と笑い返して



「いらっしゃいませ」



私もさっそくお客さんを迎え入れた
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