ことほぎのきみへ
袋の中から出てきたのは
普段使いしやすいブラウンの手袋


「……嬉しい
ちょうど、欲しかったんです。手袋」


いつも学校につけてた手袋があったけど
長年愛用してたからぼろぼろで

買い換えようとしていたところだった


ひさとさんがくれた手袋は
センスのいい落ち着いたデザインだから
どんな服装にも合いそう


「そう。なら良かった」


……どこかほっとしたように見えたのは

気のせいじゃないだろう

表情を和らげ喜ぶ私を
ひさとさんは優しい目で見てる



「あの、私もひさとさんに…」


かばんから
いつ渡そうかとずっと
タイミングを窺っていたプレゼントを取り出して
ひさとさんに差し出した


「俺に?」

「はい」

「……自分が貰えるなんて思わなかったから
びっくりした」

「それは私もです」


差し出したプレゼントを前に
さっきの私のように目を丸くするひさとさん

内心、どきどきしながらも
その表情を見て笑顔を返せば

ありがとう、と
ひさとさんは受け取ってくれた


「俺も開けていい?」

「どうぞ」

「……ネックウォーマー?」

「はい。ひさとさん、いつも首もと寒そうだから
それならマフラーより使いやすいかなって」


ゆったりとしたシンプルな服装の多いひさとさん

マフラーみたく巻く必要もほどける心配もない
楽なネックウォーマーを選んだ

家でつけてても違和感のないもの



「…ありがとう」



手にしたそれを眺めて
それから私に顔を向けて、ひさとさんは笑った
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