ことほぎのきみへ
軽傷だった私は数日で退院したものの


それからしばらくは

ろくに食事も摂れなくて、眠れなくて

ただひたすら壊れたように泣き続けた



花菜や優、お父さん
亜季やゆうり、一樹にゆまちゃん、先輩達
矢那さん


みんな心配して
たくさん声をかけてくれた、連絡をくれた
会いに来てくれた、傍にいてくれた


崩れ落ちる私を
なんとか引き上げてくれようとした



だけど、ダメだった



何をされても、言われても

受けた衝撃が強すぎて

私はそこから這い上がれなかった




日を追うごとに憔悴していく私を見て

私の『その先』を危惧したお父さんが
私を病院に連れていこうとした頃に


ひさとさんが退院した事を矢那さんから聞いて


そこでようやく私は
少しずつ落ち着きを取り戻した


心配するまわりのみんなの顔や声に
目を向けられる、耳を傾けられるようになって


特に

幼い弟と妹の泣き顔が
不安そうに揺れる瞳や声が

胸にぐさりと突き刺さって



食べたくなくても食べなきゃと

眠れなくても眠れるようにしなきゃと


無理矢理、自分に『生きる行為』を課した
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