ことほぎのきみへ
「自分が傍にいることで
ひさとさんを不幸にしてしまうことが怖い」
また同じような事が起こったら
自分が助かるような状況でも
私の命が危険に晒されたら
ひさとさんはあの時と同じように
また私を助けようとするだろう
自分よりも私を守ろうとする
あのひとはそういう人だ
私が傍にいることで
あのひとが傷つくなら
あのひとを不幸にさせてしまうなら
「…………すごく勝手だけど……」
たくさん巻き込んで、踏み込んで
掻き回すだけ掻き回して
なんの責任も取れないままだけど
「お別れします」
ずっと傍にと願った
隣にいてくれることを望んだ
でも、失いかけて思った
あのひとが幸せでいてくれるなら
何事もなく穏やかに生きてくれれば
私はそれで充分
あのひとを支える人は私じゃなくてもいい
傍に寄り添う相手は私じゃなくてもいい
別の誰かでも構わない
この先も
ひさとさんが笑っていてくれるなら
……自分じゃなくても
「……いろはちゃん」
「矢那さんにも、たくさんお世話になりました
……お姉ちゃんができたみたいで嬉しかった」
「……」
「……ひさとさんのこと、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げれば
そっと引き寄せられて、抱き締められる
「……あなたが、自分の意思で
たくさん悩んで決めたことなら
それに文句を言う筋合いは私にはないわ」
「だけど」
「……待ってるわ。
あなたがまた、ここへ来てくれる日を。ずっと」
……慈しむような抱擁に、優しい言葉に
堪えきれずに泣いてしまった私に
矢那さんは穏やかに笑いかけた
ひさとさんを不幸にしてしまうことが怖い」
また同じような事が起こったら
自分が助かるような状況でも
私の命が危険に晒されたら
ひさとさんはあの時と同じように
また私を助けようとするだろう
自分よりも私を守ろうとする
あのひとはそういう人だ
私が傍にいることで
あのひとが傷つくなら
あのひとを不幸にさせてしまうなら
「…………すごく勝手だけど……」
たくさん巻き込んで、踏み込んで
掻き回すだけ掻き回して
なんの責任も取れないままだけど
「お別れします」
ずっと傍にと願った
隣にいてくれることを望んだ
でも、失いかけて思った
あのひとが幸せでいてくれるなら
何事もなく穏やかに生きてくれれば
私はそれで充分
あのひとを支える人は私じゃなくてもいい
傍に寄り添う相手は私じゃなくてもいい
別の誰かでも構わない
この先も
ひさとさんが笑っていてくれるなら
……自分じゃなくても
「……いろはちゃん」
「矢那さんにも、たくさんお世話になりました
……お姉ちゃんができたみたいで嬉しかった」
「……」
「……ひさとさんのこと、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げれば
そっと引き寄せられて、抱き締められる
「……あなたが、自分の意思で
たくさん悩んで決めたことなら
それに文句を言う筋合いは私にはないわ」
「だけど」
「……待ってるわ。
あなたがまた、ここへ来てくれる日を。ずっと」
……慈しむような抱擁に、優しい言葉に
堪えきれずに泣いてしまった私に
矢那さんは穏やかに笑いかけた