ことほぎのきみへ
ひさとさんはぎゅっと私を抱き締めた後
少し体を離して
「さっき、矢那さんときみの会話
聞こえちゃって」
「……え」
少しばつが悪そうに言われた言葉に
私は濡れた瞳のまま、きょとんと目を丸くした
「きみが
あの家に来るのをやめるって、俺と別れるって
矢那さんに伝えた時に
俺は自分がひどく動揺してることに気付いた」
「いろはが俺から離れていくことを嫌だって思った。手離したくないって」
「……それで、自覚した」
「俺はいろはが好きなんだって」
「……ひさとさ……」
涙を流す私の頬を撫でて、ひさとさんは優しく笑う
「好きだよ」
「っ」
「だから、ずっと傍にいて」
いつかのように
こつんと自分の額を私のそれに当てて
どこまでも優しい眼差しを向ける
頬を伝う涙の感覚は止まらない
だけど
「はい……っ」
泣きながらも笑って返せば
ひさとさんはもう一度私を力強く抱き締めた
ほんの数分前まで抱いていた不安や恐怖
痛み、苦しみ、葛藤……
そのすべてが
その一瞬で全部消えていった
少し体を離して
「さっき、矢那さんときみの会話
聞こえちゃって」
「……え」
少しばつが悪そうに言われた言葉に
私は濡れた瞳のまま、きょとんと目を丸くした
「きみが
あの家に来るのをやめるって、俺と別れるって
矢那さんに伝えた時に
俺は自分がひどく動揺してることに気付いた」
「いろはが俺から離れていくことを嫌だって思った。手離したくないって」
「……それで、自覚した」
「俺はいろはが好きなんだって」
「……ひさとさ……」
涙を流す私の頬を撫でて、ひさとさんは優しく笑う
「好きだよ」
「っ」
「だから、ずっと傍にいて」
いつかのように
こつんと自分の額を私のそれに当てて
どこまでも優しい眼差しを向ける
頬を伝う涙の感覚は止まらない
だけど
「はい……っ」
泣きながらも笑って返せば
ひさとさんはもう一度私を力強く抱き締めた
ほんの数分前まで抱いていた不安や恐怖
痛み、苦しみ、葛藤……
そのすべてが
その一瞬で全部消えていった