ことほぎのきみへ
檜の香りが漂う広々とした豪華なお風呂

海の幸をふんだんに使用した
これまた豪華な夕食を堪能し

皆で談笑を楽しんだ後


その後はそれぞれ思い思いの時間を過ごす

娯楽場で腹ごなし

ロビーでゆっくり休んだり

客室でテレビ鑑賞

売店をのぞく人


私は亜季ともう一度お風呂に入って
それから少し庭園を散策することにした




「…すずしー」


火照った体に心地よい外気に目を細める


ライトアップされたおしゃれな庭園を歩きながら、怒濤の一日を振り返った


「…まさか、会えるなんて」


まだ夢心地



「…すごいなぁ」


足を止め
懐から取り出した小袋をじっと見つめる

なかには星砂が入っている


願ったあとすぐに会えるなんて
奇跡的だ


花菜にあげようと思ってたけど
これは自分で持ってよう


持っていたらもしかしたらもう一度…






「………もう一度?」


思った言葉に
ん?と首を傾げる


…私、今なんでそんな風に思ったんだろう



『もう一度会えるかもしれない』


なんて



「??」


もう一度会えた


昔のこと、正直には話せなかったけど
お礼は言えた


ずっとずっと
言いたかったありがとうを言えた

もう、思い残す事はない


…はず、なんだけど…


「…?」


ぐっと胸元を押さえる

この、もやもやした感じはなんだろう


水の中にいるように息苦しい
時々、鈍く痛む


「変なの…」


よく分からない気持ちを胸に残したまま
再び歩きだした
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