ことほぎのきみへ
一通り見て回った私はつゆき先輩に声をかけた


「つゆき先輩、なに見てるんですか?
……ぬいぐるみ?」


なにやら真剣な表情をして吟味してると思えば、その視線の先にあったのは
ご当地キャラのぬいぐるみ


…つゆき先輩とぬいぐるみ


あまり似つかわしくないその組み合わせにぱちくりと目を瞬かせる


「どっちがいいと思う?」

衣装が違うふたつのぬいぐるみをかかげて、意見を求めてくる先輩に首を傾げる


…小さい子向けのもの…


「つゆき先輩、兄弟いるんですか?」

「ああ。双子の妹」

「双子!」

「見るか?」


スマホを取り出したつゆき先輩は
手慣れた様子でフォルダから写真を探し、私に見せてくれた


「か、かわいい…」


無意識に口に出てしまうくらいかわいい


小学校低学年くらいの女の子がふたり

見た目も服も仕草も
そっくりそのまま、写したかのよう

唯一違うのはほくろの位置


「右目の下にほくろがあるのが
姉のゆき
口元にほくろがあるのが
妹のつき」



ふわふわロングの栗色の髪
まんまるくりっくりの大きな目
ぷにぷにして触り心地の良さそうな色白のほっぺた
口紅要らずの桜色の唇


小学生モデルですかってくらいに
とにかくかわいい


「か、かわいいですね」

「かわいいんだ」


真顔で頷く先輩

ぱっと見、クールに見えたけど
どうやらつゆき先輩は身内に相当甘いらしい


次々、可愛らしい写真を見せてくれる
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