ことほぎのきみへ
ロビーで買ってもらったアイスを食べながら
つゆき先輩と雑談


「柳も兄弟いるんだな」

「はい。小学生の弟と妹が」

「通りで。亜季の扱いがうまいと思った」

「亜季は高校生ですよ」



苦笑を浮かべながら返すと
つゆき先輩もふっと笑う


…初めて笑った顔を見たかもしれない


いつもの表情と比べると随分柔らかく感じる



「あいつ、幼いだろ?」

「否定はしないですけど」

「無邪気で猪突猛進で
昔から振り回されてたんだ」

「昔から?」

「ああ」


聞くと、つゆき先輩とまなぶ先輩、亜季は
小学生の頃からの付き合いなのだという


その事は亜季から聞いてなくて

初耳だったので少し驚く


「そんなに長い付き合いだったんですね」

「ああ。
高校から悟もその中に入って、さらに毎日賑やかになった」





「高校に入ってから、柳達と知り合ってから
亜季は毎日楽しそうにしてる
…ありがとな」

「…」


その優しい言葉に

ぴくりと感じたのは特別な何か



……なんだろう。これ



つゆき先輩が呼ぶ『亜季』の名前
さっきから響きが優しい


柔らかな目もと。穏やかな表情




……もしかして



「…つゆき先輩
亜季の事、好きですか?」

「…」



思わず問いかけてしまう

つゆき先輩は驚いたように目を見開いた






「…好き「だった」って言うのが正しいな」



少しの沈黙の後

つゆき先輩は小さく息をついてから
優しく笑って答えた
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