ことほぎのきみへ
「おみくじって結んだ方がいいんだっけ?」

「えーと確か……
その内容が自分にとって良いものだって思ったなら持って帰っても良かったんじゃないかな?」


「そっか。じゃあ持って帰ろ」


嬉しそうに小さなおみくじを財布の中にいれるゆうりを微笑ましい目で見つめていると


ふと、その視界に入った人がいた



……え?



「いろは?」

「……ごめん、ゆうり
ちょっと待ってて」

「へ?いろはっ!?」



ゆうりにろくに説明もせず

見覚えのある後ろ姿を見つけた私は
衝動的に駆け出していた



人混みを縫うようにすいすいと先へ進んでいくその人を必死に追う








気付けば人もまばらに




「……ここ、裏参道?」



きょろきょろとあたりを見渡す



今立っているこの場所は


表参道の賑やかさとはうって変わって
静寂につつまれてる


暗闇を照らす灯籠飾り


至るところにそれが飾ってあって
オレンジ色の淡い光が幻想的な光景を作り出している
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