ことほぎのきみへ
「!」


緩い段差で
ずっと先まで続いている石階段を
ゆっくりくだっていってるその人を見つけ


「……あのっ」


石階段の一番上から声をかける



「……あれ。
きみは、昨日の……」


私の呼び声に反応して振り返ったその人は
相変わらず読めない表情で私を見上げた

ただ少し
その声は驚いているように聞こえた



そんな彼を見返して、私ははっと我にかえる



……あれ?


私、なんで追いかけて来ちゃったんだろう?


姿を見つけて迷わずその背中を追った


……どうして呼びかけてしまったんだろう?


何も考えず声をかけてしまった



自分のその行動の理由が分からず、困惑する
引き留めておいて、それ以上言葉が続かない
< 55 / 252 >

この作品をシェア

pagetop