ことほぎのきみへ
「優」

「……なに」


むくれる優をぎゅーっと抱きしめ、頭を撫でる


「ありがとう」

「…」


優は一瞬
驚いたように目を丸くして

その後、気恥ずかしそうにほっぺたを赤く染めて

だけど安堵するように力を抜いて


されるがまま



……優しい弟、かわいい妹


大事な家族



守りたい


もう二度と失いたくない






……ありがとう。優


でも、いいんだ


私はいいの


優や花菜が笑って
何不自由なく過ごせる毎日を与えられるなら
私の時間なんていくらでもあげる


家族のために
一生懸命働いてくれてるお父さんのために

家の事は全部私がやるって言い出したの

帰ってくる場所が居心地のいい空間であるよう
疲れを癒せる場所であるように
出来ることは何でもするって決めたの


全部、自分で決めたの


だから


あなた達は私の事なんて気にしないで



……笑ってて



それだけで充分だから
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