ことほぎのきみへ
学校からの帰り道

皆と別れた私はひとり思案に耽っていた



『気になってるやついねぇの?』



…一樹の言葉が引き金になったなぁ


また思い出してしまった


時折ふと思い出して、会いたいと思う人



出会ったのは確か中学二年の時
お母さんが亡くなって3年位経った頃の事


その日はいつもより疲れていて

誰かと話すのも関わるも

何かをするのも


なにもかも嫌で、初めて学校をさぼった



あてどなく歩いていた

途中

お母さんや家族の皆とよく遊びに行っていた
懐かしい海の光景が頭をよぎった


命日が近かったからかもしれない


それでなんとなく海を見たくなって
あの波の音を聞きたくなって
電車に乗って、そこに向かった



堤防の上から見えた景色がとても綺麗だと思ったのを覚えてる


あの人とはそこで出会った



…絵を、描いていた
スケッチブックに


海の絵

その時の時間帯は昼だったけど
描いていたのは夜の海の絵だった


シャーペンひとつで明暗を表現して
細部まで描きこんで


芸術的なことは私にはよく分からなかったけど
惹き付けられる絵だった
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