ことほぎのきみへ
苦笑いを浮かべながら、とりあえずは頷くものの


このままだとさらに色々言われてしまいそうだったから、私は素早く話題を変える


「『怒りを忘れて』って、やっぱり怒ってたんだね」

「……もしかして、亜季から聞いた?」

「大変だったね」


頷く代わりにそう返すと
ゆうりは「あ~もーっ!!」っとがしがしと髪の毛を掻き回して発狂しながら
そのままテーブルに突っ伏した


「……亜季め」


恨めしげにぼそりと亜季の名前を呟く



「悟先輩とは随分話せるようになった?」

「……うん」

「良かったね」

「…………でも、焦る」



突っ伏したまま、僅かに顔をこちらに向けて
ゆうりは困ったようにため息をつく


キッチンでお茶の用意をしていた私は
そのまま「どうして?」と問いかけた


「……悟先輩、モテないなんて言ってるけど
裏でかなり人気あるから」

「そういえば亜季も言ってたね」



つゆき先輩みたいに普段から女の子に囲まれてたり、あからさまなラブコールを受けたりはしてなくても


根っこの面倒見のよさとか
男女関係なくさっぱりとした態度とか
そういうのが
まわりからかなり好感が高くて


陰ではかなりきゃーきゃー騒がれてるって
前に聞いた



「………悟先輩を誰かにとられそうで怖い」

「…」

「ゆまちゃんは、告白自体は焦らなくていいって言ってたけど…
私がもたもたしてる間に誰かが先に告白したら?
悟先輩に好きな人ができたら?」
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