私のかみさま
……というか、やっぱりこの人ホームレス?


「…。えっと…じゃあ私は帰ります
ご迷惑おかけしました」


色々、つっこみどころが満載だけど
これ以上関わると面倒臭そう

さっさと立ち去ろう


再び頭を下げて、歩き出す



「…お前は、なんで死にたいなんて思うんだ?」



すれ違いざまの、唐突な問いかけ

ぴたりと足を止める


振り返ると、感情の読み取れない顔で

そのひとは私を見返した



「それだけの苦痛があるのか?」



声を返せずにいると、再度の問いかけ



……実際(未遂に終わったけど)
飛び降りた人間に
わざわざそんな事を聞くだろうか


解りきった解答じゃないの?


苦痛なんて



「……あるから、逃げたんです」



だから、飛び降りた


見ず知らずの他人からの遠慮のない質問に
答える義理なんてないのに


感情がそれを拒んだ


気持ちを吐き出してしまう



「自分が弱いのも、ずるいのも知ってるんです
そんな自分が嫌いなんです
…でも、変われないんです」



嫌で嫌で仕方ないのは

他人でも環境でもなく自分


もう嫌だ

もう終わらせたい


逃げることを許して欲しい

この選択を責めないで欲しい



お願いだから、もう…



「……どうしたら、楽に死ねますか?
教えてください」
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