私のかみさま
『佐奈、どうか…』


『どうかあの方を……
榊を、ひとりにしないであげておくれ』



祈るような、願うような声が耳に残ってる




病室で


もう寝てる時と、起きてる時の
境目も、曖昧になっていたおじいちゃんが


最後に私に遺した『昔のお話』


懐かしそうに、ぽつりぽつりと


独り言のように、溢した話




『寂しそうに笑う神様に出会ったんだ』




榊と出会った当時の
おじいちゃんを取り巻く環境は複雑で

たくさんの別れや悲しみを、痛みを経験していて

心はもう、疲弊していた



悲しくて


辛くて


苦しくて



どうしようもない時に


寂しくて仕方ない時に



出会ったのが



手を差し伸べてくれたのが、神様



……榊だった
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