私のかみさま
おばあさんの分かりやすいメモのおかげ


それほど時間もかからず


無事目的地にたどり着いた



『倉敷』と書かれた表札を確認してから

インターホンを鳴らす



『はーい』

「……こ、こんにちは。cIochetteです
ご注文戴いた花束をお届けに参りました」

『ああ、ご苦労様です
今開けますね』



ぱたぱたと慌てて駆け寄るような足音と一緒に、目の前の扉が開いて


中から顔を出したのは若い女の人

大人びた雰囲気だけど、大学生くらいかな


声から受けた印象通り

ふわふわした可愛らしい人



「あら。初めて見る女の子
すずかさんのお孫さん……ではないわね
バイトの方かしら?」

「は、はい
あの、こちらご注文戴いた花束です」


慣れない会話に噛みそうになりながらも

なんとか言い切って

フラワーバックから花束を取り出す



差し出した花束を受け取ったその人は

それを見るなり目を細めた



「すずかさんの所のお花は相変わらず綺麗だわ
アレンジもいつも素敵。
暑い中、ありがとう」

「……い、いいえ
ありがとうございます」



受け取りのサインをもらって、その場を後にする


去り際に、ちらりと振り返れば

彼女は微笑みながら

私に手を振って見送ってくれた
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