私のかみさま






「…」


一瞬だけ、浮遊感を感じた気がしたのに

落ちていく感覚がなく、冷たさや痛み
なんの衝撃も感じなかった


不審に思って、瞑っていた目をあけると


視界にうつるのは宙に浮く自分の足



「……若いくせに身投げときたか」



すぐ背後で呆れた声


緩く首を動かすと
見慣れない不思議な服装の男のひとがそこにいた


私の両脇に腕をまわして、私が落ちないよう体を支えている


「…」


急に現れたそのひとに目を丸くする


…このひと、どこから…


崖から落ちる直前まで確かにひとはいなかった
気配だってなかったのに


「よっ、と」


私を抱えたまま数歩下がり、そっと地面に私をおろす


何も言葉を発する事ができず


ただ呆然とそのひとを見上げた
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