溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
10.プロポーズは甘く
京都駅に到着した新幹線から降りると、多くの人でにぎわう構内を進む。京都を訪れるのは中学の修学旅行以来だ。
「そっちじゃない。こっち」
「あ、ごめん」
右も左もわからないなか、広海さんを見失わないように気をつけながら後を追う。
ジリジリした太陽の日差しが照りつける東京も暑いけれど、京都の蒸し暑さも尋常ではない。額にジワリと浮かんだ汗を拭って足を進めると、ほどなくしてタクシー乗り場に着いた。
「どうぞ」
「ありがとう」
私を優先してくれる彼にお礼を言って、後部座席に乗り込む。
エアコンが効いている車内でホッとひと息つくと、彼が運転手さんに「北山まで」と行き先を伝えた。
私たちを乗せたタクシーが静かに発進する。
京都に詳しくない私には『北山』がどんな場所なのかさっぱりわからない。けれどそこに専務がいると思っただけで、鼓動が早鐘を打ち始めた。
勢いに任せて京都まで来てしまったものの、本当にこれでよかったのかな……。
不安が胸の中で徐々に膨らんでいくのを自覚していると、広海さんがおもむろに口を開いた。
「俺、アンタのこと好きだよ」
「えっ?」
突拍子もない告白を聞き、一瞬息が止まる。
「アンタッてかわいいし料理上手だし、一緒にいるとホッとするんだよね」