溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
萌さんと許嫁になった経緯を一気に話し終えた彼が大きく息をついた。
「そうだったんですか」
「ああ。だから俺はかなり前から萌のことを許嫁だとは思っていなかったんだ。でも今朝、広海に指摘されて、そう思っているのは自分だけなのかもしれないと気づいた。だからケジメをつけるために京都に行って、萌とご両親に許嫁の解消を申し出た。けれど笑われたよ。本気だったのか?ってね」
彼が『萌の両親にきちんとケジメをつけさせてくれ』と言った意味がわかり、ようやく心が軽くなった。
「そうでしたか」
「ああ」
曇っていた彼の表情が再び明るくなったことがうれしくてニコリと微笑む。すると手の上に、彼の大きな手が重なった。
「今になってこんなことを言っても言い訳に聞こえるかもしれないが、許嫁のことを菜々子に隠していたわけじゃないんだ。それだけは信じてほしい」
私を見つめるまなざしは真剣そのもので、やはり彼は実直な人だということを再認識した。
「はい、信じます。専務のこと……」
「ありがとう」
見つめ合っていた瞳に熱が帯びて、お互いの指が自然に絡み合う。
もう言葉を交わさなくても彼がなにを願っているのかわかるし、私がそれに応えたいと思っていることも伝わっているはずだ。