溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
萌さんの家に向かうタクシーの中で、広海さんと交わしたやり取りを説明した。すると彼の眉間にシワが寄る。
「前から思っていたんだけど……菜々子と広海、少し仲がよすぎるんじゃないか?」
「別によすぎるってことはないと思いますけど……」
彼が不満を口にするのは珍しいと思いつつ、“仲がよすぎる”という指摘を否定した。それでも彼の機嫌は直らない。
「アイツのことを名前で呼んでるし、敬語じゃないし……」
渋い表情のままさらに不平を並べ立てる彼を見ていたら、これはヤキモチだ、ということに気がついた。
「わかりました。ふたりきりのときは専務のことも名前で呼ぶことにしますし、極力敬語も控えます」
彼の不満に歩み寄れば、険しい表情が少しだけ緩んだ。
「そう言っているそばから、敬語だけど?」
「それは追々に。それより専務のこと、これからは“マーくん”って呼びましょうか?」
「いや、それだけは勘弁してくれ」
心の底から嫌そうな顔をする彼がおもしろい。
クスクスと笑っていると、彼も同じように笑い出す。
指を絡ませたまま笑い合うひとときがとても楽しくて、京都まで来てよかったと心から思った。