溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~

差し出された彼の手に自分の手を重ねて、嵐山に到着したタクシーから降りる。

手を引かれて他愛もない会話を交わしつつ足を進めていると、ほどなくして目的地に到着した。

「ここは竹林の道。嵐山で俺が一番好きな場所だ」

彼の顔に爽やかな笑みが浮かぶ。

空に向かって真っ直ぐ伸びる青々とした竹林は、とても凛々しくて美しい。

「素敵な場所ですね」

「気に入ってくれてよかったよ」

彼が好きだという場所に連れて来てくれたことをうれしく思いながら、腕を絡ませ足を進めた。

木漏れ日が差し込む竹林の道の風景に感動していると、彼の唇が耳元に近づいてくる。

「いつかまた一緒に、ここに来よう」

「はい」

甘いささやきに魅了されつつ、ふたりの約束ごとが増えた喜び浸っていると、彼が少しオーバーに首を左右に振った。

「菜々子は俺の言葉の本意をちっとも理解していないようだ」

「えっ?」

眉根を寄せて不満を言う理由がわからず、キョトンとしてしまう。

「ふたりでここにまた来るというのは、一年後とか五年後とかそういう意味じゃないんだ」

「……?」

時折吹く風を受けて揺れる竹の葉がサワサワと音を立てるなか、彼の話に耳を傾ける。けれど『本意』がどうしてもわからない。

戸惑いながら顔を上げると、彼が優しげに微笑んだ。

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