溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
嵐山から少し離れた旅館が今日の宿泊先。畳敷きの純和風の離れの部屋からは木々の葉が青々と茂る風情ある庭園が一望でき、その一角には檜作りの露天風呂が見える。
ほんの数時間前に一泊すると決めたのに、予約をしなくてもこんな素敵な宿をすぐに押さえられることに驚いていると、彼がさらに驚くような言葉を口走った。
「一緒に入ろう」
主語がなくても言いたいことはわかる。
「い、いいえ。お先にどうぞ」
日は傾き始めたものの、まだ辺りは明るい。一糸まとわない姿を見られるのは恥ずかしい。
首を左右に振ると急いで後ずさりした。けれど彼の大きな手が私の腕を掴んで離さない。
「本当は渡月橋や世界遺産の天龍寺も案内したかったんだ。でも、それより菜々子と早くふたりきりになりたかった……」
私の腕を掴んでいた手に力がこもり、瞬く間に彼の胸の中に体がすっぽりと収まってしまった。
早くふたりきりになりたかったのは私も同じ。それなのに、いざとなるとどうしても羞恥を感じてしまう。
抱きしめられたまま黙り込んでいると、しびれを切らしたように彼がポツリと言った。
「別に俺はこのままでも、かまわないが……」
体が後方に傾き、瞬く間に唇を塞がれる。背中がゆっくりと畳にあたり、彼の舌が私の唇を押し開いた。