溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
2.再会は衝撃的に
五月最終日の午後六時すぎ。定時で仕事を終わらせてオフィスをあとにすると、一階ロビーで肩をポンと叩かれた。
「ちょっと、そこのアンタ」
社内で私のことを『アンタ』と呼ぶ人に、心あたりはない。
警戒しながら振り返えると、そこには仏頂面を浮かべる男性の姿があった。
「……えっ?」
驚きで固まる私に対して、彼は無愛想に話かけてくる。
「アンタ、経理部の雨宮菜々子さんだよね?」
「はい……。そうですが」
彼が私の名前と配属先を知っていることに驚き、首をかしげた。
「ちょっと話があるんだけど、時間ある?」
残念ながら今の私には仕事終わりにデートするような相手はおらず、この後の予定は真っ直ぐ家に帰るだけ。それに彼が接触してきた理由も知りたくて、すぐに「はい。大丈夫です」と返事をした。
「じゃあ、こっち」
「はい」
足を進め始めた彼の後を追った。
一階ロビーを横切った彼は地下に続く階段を下りていく。
正面玄関から外に出て、コーヒーでも飲みながら話をすると思っていた私にとって、彼の行動は予想外。