溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「あのっ! どちらに?」
「俺、車通勤だから」
「あ、そうですか」
階段を下りる足音とともに、ふたりの声が響き渡った。
基本、社員の車通勤は禁止されている。けれど彼は普通の社員ではない。だから車通勤を許されているのだろう。
彼に続いて階段を下りていると、ほどなくして地下駐車場にたどり着いた。車高の低いスポーツタイプの車の前で止まった彼が、ロックを解除する。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
見るからに高級そうな車のドアを開けてくれる紳士的な彼にお礼を言うと、助手席に乗り込んだ。
思いがけないドライブを前に胸が高ぶるなか、やや緊張しながらシートベルトを締める。そして運転席に乗り込んだ彼がエンジンをかけると、車がなめらかに動き出した。地下駐車場を出た車は大通りを進む。
私が勤めているフジオカ商事の本社ビルは東京の青山にある。
大手企業のビルやブランドショップでひしめき合う青山の街並みを助手席から見るのはとても新鮮で、窓の外に流れて行く景色を食い入るように見つめた。