溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
バーの大きなガラス窓の外には、きらびやかな東京の夜景が広がっている。
その景色はとても綺麗だけれど、独り身の私にはまぶしすぎる。
夜景からすぐに視線を逸らすと、オリーブが添えられたカクテルグラスが目の前にコトンと置かれた。
「お待たせいたしました」
マティーニはアルコール度数が強いカクテル。これを飲めば確実に酔えるはず。
自分の身に起きた忌まわしい出来事を忘れたい一心で、マティーニに口をつける。キレのある辛口な味に満足しながら飲み干すと、すぐにお代わりをオーダーした。
「そんなに早いペースで飲んだら、悪酔いしますよ」
不意に聞こえてきた声に驚いて右隣りに視線を向ける。すると、ふたつ先のカウンター席に座り、やわらかな笑みをたたえて私を見つめる彼と目が合った。
二重の澄んだ瞳と通った鼻筋、男のくせに艶やかな唇がバランスよく配置されたイケメンの彼に声をかけられ、息を飲む。
私は彼のことを知っている。といっても、彼の地位と名前を知っているだけだけど……。