溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
フジオカ商事の就業規則ではダブルワークは禁止となっている。私が東京プリマホテルでも働いている事実を知られた以上、就業規則違反で解雇になるのは免れないだろう。けれど万が一ということもある。
「専務、お願いします。クビにしないでください」
今回の一件を見逃してくれることを期待して、なりふりかまわずに頭を下げて頼み込む。しかし彼の淡々とした態度は崩れなかった。
「旅館を経営しているご両親に泣きついて金を借りるか、実家に帰れば済む話だろ?」
彼の言う通り、私の親は静岡県の伊豆で旅館を営んでいる。
小学生の頃は宿題を終わらせないと遊びに行ってはダメだと言われ、中学生になっても午後六時の門限を変えてもらえなかった。
厳しく育てられた私が親に初めて反抗したのは、高校三年生のとき。東京の大学に進学することを決めた私に対して、父親は女に教養は必要ない。地元の短大に進学して卒業したら、見合いをして結婚すればいいと言い放った。
このままでは自分に明るい未来は訪れない……。
そう悟った私は、親の反対を押し切って東京の大学に進学した。