溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「……親とは仲が悪いんです」
家出同然で上京した手前、今さら親に泣きつくことなどできない。でもその事情を説明するのは面倒くさくて、手短に話を終わらせた。
なに不自由なく育った御曹司である彼らに、お金に困っている現状を理解しろというのは無理な話なのかもしれない。
ようやく頭が冷えてきたとき、彼が思いがけないことを言い出した。
「俺が出す条件を受け入れるというのなら、解雇は考えてもいいが……」
「本当ですかっ!?」
食い気味に迫ると、彼が「ああ」とうなずいた。
「まず、東京プリマホテルの仕事はすぐに辞めること」
どんな条件を出してくるのだろうと身がまえていた私の前で、彼の形のいい唇が動く。
フジオカ商事のお給料だけでは生活が苦しいからダブルワークしているのに……。
内心そう思ったものの、東京プリマホテルの仕事を辞めることに同意しない限り話は進まない。
「わかりました」
真っ先に出された条件を受け入れた。
「それから金に困っている社員を経理部に配属しておけない。雨宮さんには俺の専属秘書である広海のサポートをしてもらう」
秘書検定資格もなく秘書業務の経験もゼロの私に、広海さんのサポートが務まるわけがない。