溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「引っ越し資金は俺が出すし、家事手当もきちんと払う。少しの間、我慢して俺と暮らすだけで金が貯まる。悪くない条件だと思うが、どうかな?」
彼の言う通り、たしかに条件は悪くなくて心がグラグラと揺れた。すると、今までスマホをいじっていた広海さんが声をあげる。
「はい。契約成立!」
「えっ? ちょっと!」
話を強引に進めようとする広海さんに反論したものの、私を無視したまま専務に話しかけた。
「あのさ。もう俺、帰りたいんだけど」
「あと少しだ。我慢してくれ」
「ちぇっ」
不満げに唇を尖らせる広海さんをなだめた専務が、事務的に話を続ける。
「引っ越しは三日後の日曜日。業者はこちらで手配するから雨宮さんはなにもしなくていい」
いつの間にか一緒に暮らすことが決まっていることに驚き、目をしばたたかせる。
「そんなに急に?」
「善は急げというだろ?」
恋愛感情のない相手とひとつ屋根の下で暮らすのは、やはり抵抗がある。けれどクビを回避できる方法がほかに思い浮かばない。
こうして私は専務と一緒に暮らすという条件を、泣く泣く受け入れた。