溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「雨宮さん」
「はい」
「がんばってくださいね」
「ありがとうございます」
厳しいだけではない心遣いに感謝すると、再び足を進めた彼の背中に向かって頭を下げた。
「中にどうぞ」
「はい。失礼します」
広海さんに促され、専務室に足を踏み入れる。
入り口に対して向かい合うように配置されたデスクの上にはパソコンと電話が設置されており、その奥に重厚な造りのドアが見える。
この場所は執務室。あのドアの向こう側に専務がいると思っただけで、心臓がドキドキと音を立て始めた。
「では改めて、これからよろしく」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
昨夜、一緒に食事をした広海さんと挨拶を交わす。
新人のように萎縮する私を、広海さんがあきれ顔で見つめる。
「もしかして緊張してんの?」
「はい。もちろん」
「まあ、仕方ないか」
緊張気味の私の前で、広海さんがため息をついた。
「さて、ご専務様とご対面といきましましょうか」
「……はい」
私の緊張をほぐそうとして専務のことをわざと『ご専務様』と言ってくれたのだろう。しかし残念ながら今は彼の冗談に笑う余裕はない。これから社長の次に地位が高い専務と面と向かって会うと思うと、緊張が増してくる。