溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「まずは取引先の情報を覚えてもらうから」
デスクに座った広海さんがパソコンのデータを開くと企業名と役員の氏名、家族構成や趣味にアレルギーの有無などの膨大な情報が表示される。
「こ、これ全部覚えるんですか?」
「もちろん。あ、それからこれがさっき言っていたマナー本。ボロッボロになるまで読んで」
「……はい」
デスクの上にマナー本をポンと置かれた。
経理部では多くの伝票や書類をいかにすばやく正確に処理することが重要だった。しかし専務の専属秘書業務に、経理事務のスキルは必要なさそうだ。
「この人誰だっけ?と思いながらお客様の応対をするのは失礼だし、家族構成や趣味は手土産を用意するときの参考に。それからアレルギーに関しては会食するときにその情報を活かすんだ」
「なるほど……」
説明に納得しながらマウスを動かす。
「ただし、個人情報満載だから取り扱いには十分注意すること」
「はい。わかりました」
たしかにこれだけの情報を漏えいさせてしまったら、大変な問題になる。気を引き締めると引き続き社内データに目を通した。
「あ~。疲れたぁ!」
一日の業務を終えて帰宅すると、リビングのソファに体を投げ出した。
肩はガチガチに凝り、頭は鈍く痛み、体は鉛のように重く感じる。
食欲も湧かなかったため、熱いシャワーを浴びて寝室に向かうと、そのまま眠りに落ちた。