溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
4.引っ越し前夜はふたりで
ハッと目が覚め、寝室のデジタル時計を見る。今の時刻は午前十時。泥のように眠ったお蔭で、肩と頭の痛みはないし体も軽い。
清々しい気分でベッドから起き上がると、キッチンに向かった。
冷蔵庫から卵を取り出してスクランブルエッグを作り、その脇にレタスとミニトマトを添える。そしてクロワッサンを温めて、ホットコーヒーを入れた。
昨夜はなにも食べずに眠ってしまったため、お腹はペコペコだ。
両手を合わせて「いただきます」と言うと、ミニトマトをパクリと頬張った。
遅めの朝食を取り終えて身支度を整え、明日の引っ越しの準備に取りかかる。
『雨宮さんはなにもしなくていい』と専務に言われたけれど、すべてを業者任せにするわけにはいかない。
リビングの引き出しを開けると、預金通帳や印鑑などの貴重品は自分で運べるようにバッグにしまう。そしてウォークインクローゼットの引き出しから下着類を取り出し、外から見えない袋に入れた。
少しずつ荷物をまとめていると、引っ越すという実感が湧いてくる。
育ちも生活リズムも違う彼と、ひとつ屋根の下でうまくやっていけるのかな……。
心の中で不安が大きく膨れ上がってくるのを実感していると、スマホが音を立てた。
我に返りスマホを手に取る。そこには見たことのないナンバーが表示されていた。
「もしもし?」
知らない相手からの着信表示を怪訝(けげん)に思いながらも、応答ボタンをタップすると聞き覚えのある声が聞こえた。