溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「あの、広海さんって、おいくつなんですか?」
「二十八」
私のことを『アンタ』と偉そうに呼ぶ彼が、ふたつ年下だった事実に衝撃を受ける。
「そ、そうでしたか。では今後、オフのときは敬語なしってことで」
「……思いっきり、敬語だし」
動揺する私の前で、彼がため息をついた。
「そうですね。……あっ」
オンとオフの切り替えがうまくできず、慌てて手で口を覆う。すると彼がクスッと小さく笑った。
今まで澄ました表情しか見たことのなかった彼の笑顔は、意外にもかわいかった。
荷物の運び出しが終わり、広海さんが運転する車で南麻布のタワーマンションへ向かった。
来客用の駐車場に止めた車から降りるとカードキーでセキュリティーを解除した彼に続いてオートドアを通り、エントランスに足を踏み入れる。
大理石の床に照明の光が反射している高級感あふれるエントランスは、まるでホテルのロビーのよう。
「こっちだから」
「あ、はい」
豪華なエントランスに圧倒されている私に声をかけてきた彼の後を急いで追うと、高層階直通のエレベーターに乗り込んだ。
今日からこのハイグレードなマンションで専務と一緒に生活すると考えただけで、徐々に緊張が増していく。
エレベーターが静かに上昇するのと同じように心拍が上がっていくのを実感していると、あっという間に最上階である四十三階に到着した。