溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
引っ越しが終わり、しばらくの間利用させてもらうゲストルームを案内してもらう。
十帖あるという部屋にはセミダブルのベッドとテーブルとイスが置かれ、奥にはウォークインクローゼットが完備されている。
「自由に使ってくれていいから」
「ありがとうございます」
実家の自分の部屋よりもはるかに広くてセンスのいいゲストルームを使わせてくれることに感謝してお礼を言うと、早速ウォークインクローゼットの様子を見に行くことにした。
専務が買い揃えてくれたスーツのお蔭で、ウォークインクローゼットの中は華やかだ。
「ふーん。これ、いいじゃん」
昨日、専務が選んでくれたライトピンク色のスーツを広海さんが褒めてくれた。そのスーツは色合いが綺麗で、たしかに目につく。
「それは昨日、専務が買ってくれたんです」
「は? マジで?」
「はい……」
ライトピンク色のスーツの説明をすると、広海さんの表情が急に曇り出してしまった。
「ちょっと来て」
突然、意味不明なことを言い出した彼に、手首を掴まれる。
「えっ? どこに?」
「……」
行き先を尋ねてみても、返事はない。
不機嫌オーラを醸し出す彼は少し怖くて、手を引かれたまま黙ってマンションをあとにした。