溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「そのドレス、気に入らなかった?」
色合いが綺麗でエレガントなこのドレスを、気に入らないわけがない。
「そんなことないです。とても素敵で、私にはもったいないくらいです」
両手をフルフルと振って否定すると、彼が大きなため息をついた。
「アンタさ、年の割にはかわいいんだから、もっと自分に自信を持ったら? それにオフのときは敬語じゃなくていいって言ったよね?」
一瞬、褒められたかと思ったものの、そうではないことにすぐに気づいた。
騙された過去をいつまでも引きずり、自分を卑下するのが癖になっていることを見透かされるなんて……。
情けない思いを抱えながら視線をさまよわせると、鏡に映り込む背中が丸まった自分の姿が目に留まった。
これじゃあ、折角のドレスが台無しだ。
「広海さん。素敵なドレスを選んでくれて、ありがとう」
「ん……。どういたしまして」
背筋をピンと伸ばして敬語を使わずにお礼を言うと、彼が照れたように笑った。
ドレスショップを出ると車に乗り込む。
結局、彼は首元が寂しいからと言って、ネックレスとドレスに合うパンプスまで揃えてくれた。
これでまたクローゼットが華やかになる……。
勝手に緩む口元を自覚しながら助手席の窓の外に視線を向ければ、空一面に広がる灰色の雲が見えた。
梅雨入りも間近なのかなと思いつつ空を眺めていると、あることを思い出す。