溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
彼は私のことを『好き』だと言ったわけではないと頭ではきちんと理解していても、心臓が大きく脈打うつのを止めることができない。
車が静かに発進するなか、胸にそっと手をあてて気持ちが落ち着くのを待っていると、彼がポツリと言った。
「俺、ハンバーグが食いたいんだけど」
ドキドキさせる発言をしたかと思えば、すぐに子供みたいなリクエストをする。そのギャップに困惑しながら「うん。わかった」と返事をした。
要望通りにスーパーに寄ってくれた彼と、駐車場に止めた車から降りる。
コンビニには行くけれどスーパーには寄ったことがないという事実に驚いたものの、実家暮らしの彼が食料品を多く取り扱っているスーパーに行く用などないか、とすぐに納得した。
スーパーに入ると彼が「これ、押してみたかったんだ」と言ってショッピングカートに手を伸ばした。口元が緩んでいる彼の横顔を微笑ましく思いながら店内を一緒に進む。
「それってキャベツ?」
レタスをカートに入れた私に、彼が尋ねてくる。
「違うよ。これはレタス」
「へえ、そっか」
「うん。そう」
もしかしたら専務もスーパーに寄ったことがなくて、レタスとキャベツの違いもわからないのかもしれないと、しきりにうなずく彼を見て思う。
生活レベルの違いを実感した私は、この先の同居を少し不安に思った。