溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
テーブルの上には広海さんリクエストのハンバーグと、つけ合わせのレタスとトマトのサラダ、そしてかぼちゃの煮物と野沢菜漬け、ワカメと豆腐のスープにご飯が並ぶ。
三人で声を合わせて「いただきます」と挨拶すると、広海さんが早々に声をあげた。
「あ、うまい……」
料理はほぼしたことがないと言う広海さんには、ハンバーグのタネをこねる作業を手伝ってもらった。
出来上がったハンバーグをおいしそうに頬張る彼の様子を見て心が和む。しかし、向かいに座っている専務の表情は冴えなかった。
「専務? お口に合いませんでしたか?」
気になって尋ねると、彼が首を左右に振る。
「いや。とてもおいしいよ」
「そう……ですか」
口では『とてもおいしいよ』と言ってくれても、その表情はやはり曇ったまま。元気がないように見える様子を気にしていると、その口元がわずかに緩んだ。
「後片づけは手伝うよ」
広海さんが夕食の準備を手伝ったことを気にしているのだろうか。『後片づけ“は”手伝うよ』という言葉が引っかかる。
「いえ、大丈夫です。食洗機もありますし」
キッチンには立派なビルトイン食洗機が設置されているし、家事全般は私が担う約束になっている。
後片づけくらい私ひとりで大丈夫。そう思って申し出を断った。けれど……。
「俺の手伝いは迷惑?」
箸を置いた専務が、私を真っ直ぐ見据える。
ドレスのことも、後片づけの手伝いも、私には専務が広海さんと張り合っているような気がしてならない。
「そんなことないですけど……」
「だったら手伝う」
戸惑いながら『迷惑?』という問いかけに答えると、彼がすぐに結論を出した。
普段は穏やかで優しいのに、物ごとを決めるときの専務は有無を言わせない迫力がある。
「はい。ありがとうございます」
結局、断ることができず、後片づけを手伝ってもらうことになった。