溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
6.日常はにぎやかに
引っ越しをした翌日月曜日。出社するために専務と一緒にエレベーターに乗り込む。
「そのスーツ、とても似合っているよ」
買い揃えてもらった白のスーツを身に着けた私を見た彼が、朗らかな笑みを浮かべた。
身支度を整える前、私たちはテーブルを挟んでトーストにベーコンエッグの朝食をとった。誰が作っても同じ味に仕上がる簡単な料理だったにもかかわらず、彼は微笑みながら「おいしい」と言ってくれた。
彼の口からたびたび出る褒め言葉はお世辞。そうわかっていても笑顔で褒められれば、やはりうれしい。
「ありがとうございます」
女性の喜ばせ方を心得ている彼のお世辞を真に受けないように警戒しつつ、スーツ姿を褒めてくれたお礼を言うとエレベーターが一階に到着した。
エントランスを横切る彼の後をついて行く。するとマンションの前に、黒塗りの車が止まっているのが見えた。
たしか、あの車は社用車のはず……。
会社で社長と専務が乗った黒塗りの社用車を、車寄せ専用エントランスで見送ったことを思い出す。
迷うことなくその社用車に向かって足を進める彼を追うと、黒いスーツ姿の男性が後部座席のドアを開けた。