溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「そんなことないですけど……。でも専務、お疲れでしょ?」
彼は毎日目の回るような忙しさに見舞われているし、現に業務時間外の今も仕事をしている。
「実は息抜きしたいのは俺のほうなんだ。ひとりよりふたりの方が楽しいだろ?」
笑顔の彼が『デート』について語る。
たしかに、ひとりよりふたり、さらに言うなら三人の方が断然楽しい。
「だったら広海さんも誘いましょうよ」
広海さんは仕事終わりにマンションに立ち寄って、私たちと一緒に夕食を取ってから家に帰ることが日課となっているし、土日もふらりと姿を現す。
三人で出かけたら、きっと楽しい。そう思ったけれど、彼の考えは違っていた。
「いや、アイツは誘わない。たまにはふたりきりもいいだろ?」
「……はい」
彼の考えに反対してまで広海さんを誘う理由が見あたらなかった私は、ふたりきりのデートを承諾した。
翌日。彼の運転で鎌倉に向かう。
「専務は鎌倉に詳しいんですか?」
今があじさいの見頃だからという理由で、鎌倉に行くことを決めた彼に尋ねた。しかし質問とは違う答えが返ってくる。
「今日一日、俺のことを『専務』と呼ぶのは禁止だから」
「……はい?」
突然わけのわからないことを言い出した彼をキョトンと見つめる。