溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
「一緒に暮らしていて、好きにならないほうがおかしいんじゃないの?」
そう言われても、自分の気持ちがハッキリとわからないのだから困ってしまう。それでも上司であり同居人である彼のことは気になる。
「……専務って、彼女いるの?」
「彼女はいない」
「そうなんだ」
間隔を開けずに返ってきた答えを聞き、胸をなで下ろした。でも今度は、なぜホッとしたのかがわからない。
わからないことだらけの自分に戸惑っていると、広海さんが再び口を開いた。
「でも、許嫁(いいなずけ)ならいる」
「えっ?」
「兄貴には許嫁がいる」
「……っ!」
耳を疑うような言葉を聞き、一瞬思考が止まる。しかし同じセリフを二度繰り返した広海さんの真剣な面持ちを見たら、それが事実だということを瞬時に理解した。
専務が結婚していないのは、許嫁がいたからだったんだ……。
胸が張り裂けそうに痛み出し、呼吸が乱れる。
次期社長になる彼に許嫁がいても、なにも不思議じゃないと自分に言い聞かせてみても、胸の痛みはちっとも治まらなかった。