溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
帰宅した専務に気づけなかったうえに、醜態をさらしてしまったことが情けなくて力なく肩を落とした。
「広海。雨宮さんになにをした?」
ソファに横になっている広海さんに向かって、専務が問いかける。
「は? 別になにも……。ってか、襲われそうになったのは俺の方だからっ!」
ソファに横たえていた体を起こした広海さんが反論した。
広海さんの上に倒れ込んでしまったのは私の不注意だったけれど、『襲われそうになった』発言はどうしても納得できない。
「襲ってないからっ!」
誤解を解くために全力で否定した。
「雨宮さん。なにがあったのか説明してくれないか?」
熱くなっている私たちとは違う冷静な専務の様子を見ていたら、今はくだらないことで言い合っている場合ではないと我に返る。
「専務! 広海さん、熱があるみたいなんです」
「本当か?」
「はい」
専務が広海さんの額にすばやく手をあてる。
「たしかに熱いな。広海、家まで送る」
「……ん」
ソファから気だるそうに立ち上がった広海さんの体を専務が支える。
「雨宮さん。悪いけれど広海の鞄を持って駐車場までついて来てくれないか?」
「はい」
専務が早く帰って来てくれて、よかった……。
広海さんを家に送り届けることすらできない無力な自分を痛感しながら、ふたりのあとを追った。