溺愛依存~極上御曹司は住み込み秘書を所望する~
マンションの地下駐車場に到着した社用車から、彼の手を借りて降りる。
ここに帰る道中、彼が貸してくれたハンカチでとめどなくあふれる涙を何度も拭ったため、少しだけ気分が落ち着いたし体の震えも止まった。けれどエレベーターに乗っても、彼は私と繋いだ手を離さない。
今になって彼を意識してしまい、鼓動がトクトクと高鳴り始めた。
整った彼の横顔がすぐそばに見える。その近すぎる距離を恥ずかしく思っていると、私たちを乗せたエレベーターがあっという間に最上階に到着した。
彼はロックを解除すると玄関ドアを開ける。そして廊下を進み、リビングに入ると私の肩に手をのせた。その手に力がこもり、ソファにポスンと腰が落ちる。
「なにがあった?」
私の前で屈み込んだ彼に、ホテルの正面玄関前でうずくまって涙を流した理由を、性急に問い詰められた。
今日は創立記念パーティーに初めて出席して緊張したし、アルコールも飲んだ。だから酔いが回ってしまったのだと言い訳をすれば、余計な心配をかけずに済む。
けれど具合が悪くなった私を案じて、救いの手を差し伸べてくれた彼に嘘はつきたくない。
「彼が……いたんです」
「彼?」
「私を騙した彼が……」
「……っ!」
震える声で真実を打ち明けた私の前で、息をハッと飲んだ彼が手で口を覆った。