卒業写真    ~思い出の一枚~
「それでは、読みますね。
皆さん、楽な姿勢でのんびり聞いていて下さい。」

そう前置きをして

「昔、リンゴの木があって………」と

優しく響く声で、お話しが始まった。

内容は………

大きなリンゴの木が大好きな男の子と木の話し。

毎日リンゴの木の下で遊ぶ男の子は……

「リンゴをお食べ。」と木に勧められ

おやつのリンゴをもらって食べ

お昼寝をして過ごしていた。

木は、この幼い男の子が可愛くて仕方なかった。

やがて、男の子は子供から少年へと成長していった。

恋をした少年は、ここでデートを楽しんだ。

木は、男の子の成長が嬉しかった。

その子は……もっと大きくなり、お金がいるようになった。

相談された木は

「リンゴを持ってお行き。
リンゴを売って、お金を貰うと良いよ。」と

木になった全てのリンゴを差し出した。

当たり前のようにもぎ取って行く男の子を見ても

リンゴは幸せだった。

やがて大人になった男は、『家を建てたい』と言って来た。

そこでもリンゴの木は

自分の枝を全て渡してそれで家を建てたら良いと提案する。

男は、当たり前のように

枝を落として持って行ってしまった。

それでもリンゴの木は、幸せだった。

次に訪れた男は

「何処か遠くに行きたい」と言い出した。

木は迷うことなく

「私の幹を持ってお行き。」と言ってしまう。

もう何も残らなくなるのに…………。

男は無情にも、幹を切り持って行ってしまう。

とうとうリンゴの木は………丸裸になってしまった。
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