卒業写真    ~思い出の一枚~
「…………………桜ちゃん?」

普段、沢山の生徒に囲まれているのに。

それでも、一人一人のちょっとした変化に気づける先生が

二人で歩いていて

黙り混む私に気づかない訳はなく。

心配そうにそっと声をかけ

立ち止まった。

肩に手を回して、先生の胸に抱き寄せられて………

初めて自分が、泣いていたことに気づいた。

何も話さない私に

何も聞かずに、ただポンポンと背中を撫でてくれる先生。

随分長い時間、そうしていたようにも思うし。

僅かな時間だったようにも感じる。

涙が止まった頃。

「観覧車に乗ろうか?」って。

泣いて時間がオーバーしてしまい

せっかくの先生との観覧車…………

もうダメなのかなぁって、諦めたけど。

最後の思い出に、二人で乗ることが出来るみたい。

「行こう。」

再び手を引いて、歩き始める先生。

今度はさっきよりも、少し強引に手を引かれる。
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