卒業写真    ~思い出の一枚~
「公園か、何処かでお茶をしながらとも思ったんだけど…………
やっぱりやめた!!」

そう言うと、タクシーを停めて

「乗って」って。

スラスラと行き先を告げてからは…………

背もたれに体を預けて、目を閉じる。

何処に行くの??

怒ってる??

不安なことばかりのはずなのに………

先生の隣というだけで、安心してる自分がいる。

マンションの前で停まって、タクシーを降りる。

何にも説明はないけど………

たぶんここは、先生のお家だと思う。

「入って。」

エントランスを抜け

エレベーターを12階まで上がって

左に三軒進むと、ドアの前で止まった。

鍵を開け、片手でドアを支えて入るように促す。

「……………………………お邪魔します。」

今時のマンションだけあって

玄関と廊下の段差がない。

うちは旧家だから、こんなマンションに憧れる。

「ごめんね。
普段、人が来ないから
スリッパの予備がないんだ。
僕のでも大丈夫?」と言って差し出されたスリッパは

男の人用だけあって

とっても大きい。

「あっ、履かなくても大丈夫です。」

答えながら

彼女さんのを差し出されなかったことに、ホッとした。
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