卒業写真    ~思い出の一枚~
「木下さん、黒板に書き写すのを手伝って貰えますか?」

古典や漢文の時間は、少し早めに教室に来て

本文を先に黒板に書いておく先生。

時間を短縮出来るようにって。

その分、少し早く終わって…………

大好きな絵本を一冊、読み聞かせてくれるの。

「こんなに大きくなった娘達には
さすがにお母さん達も
寝る前に読んでくれないでしょうからね。
将来、ママになる予備軍のみなさんは
絵本を読んでもらう心地好さを覚えておいて欲しいので。
幼稚園児に戻ったつもりで
ゆっくり聞いて下さいね。」と言って。

教室には沢山の生徒が、もう席についているのに

毎回私にお願いする先生。

初めのきっかけは………確かに私だった。

一番前の席に当たった私は

後ろの席で、授業の用意をして席についている

玲奈ちゃんや夏苗ちゃんと別れて、席についていた。

教科書を片手に、一生懸命書き写している先生は

少し前の休憩時間に、職員室に呼び出され

私のクラスに訪れるのが、遅くなって焦っていた。

「あの…………
私も書きましょうか?」

小さな声で、手伝いを申し出ると

満面の笑顔で

「チョークで汚れるかもしれないですけど………
良いですか?」と。
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