雨上がりの夜空は
悠馬くんからの話題も特になく、黙って静かに2人で歩く些細な瞬間すら何故だかとても温かいから……。
「あっ、ここだよね?曲がり道」
気づけばもう悠馬くんとの分かれ道の交差点に着いていた。
信号機もない、人通りの少ない道の交差点。
その交差点を右側に曲がって突き当たりまで直進して、また右に曲がればウチの家。
「あ、うん。今日もありがとう…」
「うん。いいよ。じゃあ気をつけてね」
「悠馬くんばいばい、またね」
「うん、またね」
そう言って私は悠馬くんに小さく手を振って交差点を右に曲がった。
悠馬くんも手を振り返してくれた。
そのまま歩いて、だんだん悠馬くんから離れていく。
そしてふと気になって歩きながら後ろを振り向いた。
悠馬くんは塾の方には戻らず、そのまま道を真っ直ぐ歩いて行くのが遠くに見え、そして悠馬くんの姿は完全に交差点に建っている家の影に隠れて消えた。